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電子書籍と紙書籍

by 槻 ゆうき

 友人に教えてもらい、最近になって電子書籍を利用するようになった。私はそれまで「紙じゃなきゃ本じゃない!」というメンドクサイ固定観念をどこかに持っていて、なんとなーく電子書籍を視野の外に置いていた。しかも「紙じゃなきゃ後世に伝えられない!」とかいう素っ頓狂なことまで言っていた(データのほうが残るに決まってるのに)。今まで漫画以外の本をほとんど読んでいなかったような自分が言っているのだからなおのことメンドクサイだろう。最近になって本を読むようになったから見えてきたことかもしれないけれど、そんな風に毛嫌いしていた電子書籍にはいろいろなメリットがございます。

 まずはなんと言ってもやはりスペースを取らないこと。紙書籍だとその本を入れる本棚分のスペースを必要とするけれど、電子書籍だとタブレット(スマホでもいいけど)ひとつで済むのだ。紙書籍はとにかくスペースを取ってくる。ジョジョをシリーズ通して集めていれば、それだけで本棚の何段が埋まってしまうことか!

 持ち運びも便利だ。旅行や実家に帰省する時など暇つぶしに持って行きたいけれど、カバンのスペースを地味に使って邪魔をしてくる紙書籍(折り目がついたら嫌だから雑に押し込めないし)。その点電子書籍であればタブレットひとつでいい。しかも出かけ先でも自分の本棚にある本を自由に選んで読むことができるのだ。便利すぎる!

 もう一点、盲点だった利便性。線やメモが書き放題ということ! 小説で気になった場面に色線を引いてみたり、教科書や資料書で重要だと思う部分にメモをばんばん書き込むこともできる。もちろん消すのも思うがまま。これが意外にも重要な要素だった。扱いやすいったらないのだ。

 他にも、寝る前の暗い部屋でも電気を付けずに読むことができるところや、所持している大量の本の中から読みたい本をすぐに見つけることができるところ、片手でページをめくることができるので満員電車でも利用できるところなど、便利なところは多岐にわたる。メリットだらけだ。

 そんなわけで「え? きみ、電子書籍使ってないの? おっくれってるー」と内側の自分が調子に乗るほどその素晴らしさを実感したのだが、先日、好きな小説家の新作が出た時、私はそれを電子書籍で買わずに紙書籍で買ったのだ。どっちの形式で買おうかと迷った末に、紙書籍で買うことを選んだ。なんとなくこっちがいいやと思っただけの決断だったが、そのあと、どうしてだろうと考えて、気がついたことがあった。

 紙書籍の利点、というか、電子書籍が世に出てきてからの紙書籍の意味。先に書いた「紙じゃなきゃ本じゃない!」という固まった考えではないけれど、紙書籍にはページをめくる感触、音、紙の匂いなどの感覚的な部分がある。そこの刺激も含めて本は本なのだと思う人もいるだろう(多分自分もどこかでそう思っている)。そこに紙書籍である意味があるんじゃなかろうか。・・・・・・まあそれはどこか古臭い考えなので置いておくとして、もうひとつ、自分が好きな小説家の新作を紙書籍で買った理由に繋がることだけれど、「なんとなくな時でもそこに存在しておいてほしい」というのがあるんじゃないかと思う。例えば朝食のドーナッツを貪っている時、例えば家族や友人、恋人と電話をしている時、例えば夜寝る前の歯磨きをしている時など、なんとなくな時にその本が視界に入ると、ちょろっとその内容を思い出したり、作品の雰囲気を感じたり、続きを予想・妄想してみたりする、なんて時間が生まれるのだ。それは電子書籍にはない時間で、いわば紙書籍の「存在感」からくるものだろう。自分からではなく本の方から「ほらよ」といった感じで渡されるその時間を「好きな本」から得られる喜びは、紙書籍の意味と言っていいと思うのだ。読まなくなっても好きな本はなかなか捨てられないというのは、こういう感覚もあるからなのかもしれない。

 

 情報を自ら得るためのものとしての本であれば断然電子書籍がいいと思うが、それ以外にもその本に求めるものがあるのなら紙書籍がいいと思う。いや、出かけ先で読みたい時もあるだろうから、金はかかるが電子書籍版も併せて買えばバッチグーだ。結局、世のなか金なのである。(どんな終わり方だ)

 

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